比較民族音楽学とM氏のこと

徳丸吉彦著”ミュージックスとの付き合い方”
ここにはヨーロッパでのクラシックを中心とした音楽だけでなく、世界中の民族が奏でる音楽をも学問として見て行こうと言う決意が書かれている。勿論日本の文楽や能狂言、歌舞伎、箏曲雅楽なども。
アメリカ先住民からはたまたアフリカまで様々な人がその現地で詳しく調査している。
そして面白いのは生得的身分であるか獲得的身分であるかまで調べたひともいる。
つまり生活を保障された身分でないと四六時中関われない。
日本の伝統音楽は生得的身分が大半でしょう。
音階、音程、リズム、合奏楽器などを正規の音楽教育を受けた人が採譜し録音もしている。
一番気に入ったのはその環境、民族の特徴、体の動かし方などにも触れていることだ。
以前一緒にプレイしていたDR,PERC奏者のM氏がよく語っていたことが体の動きのこと。
彼は若い頃ブラジルに渡り滞在期限が過ぎても居残り、サンバ、ボサノバなどを民族音楽レベルで演奏できるまでになった。
(私のソロCDではDRを叩き、PERCをオーバーダブしている。ライブでもDRを叩いたてもらった)
M氏曰く、黒人の体の動きを知りその体が踊りだす時の足の動きと手の動きを見ビートを知った。
黒人のリズムはアップビートで1,2の1で体がアップする。
その予備動作の為のダブるカウントなんだ。
故に定速で演奏できるだけの修練の次にビートを意識した演奏を試みるとよい。
そんなことをよく話していた。
私は黒人逆差別の時代があって黒人のスピードがあって重たいリズムにあこがれていた。
いつでも黒人音楽を聞き歩く時も黒人のような歩き方を意識したりしていた。
M氏の感化も当然あった。
しかし日本人である私はもしかして体を微動だにしない日本伝統音楽の楽器奏者のほうが向いているかもしれないなどと考えることもあった。
例えばJAZZではニールぺデルセンやジョージムラツなどは白人ぽくてとても素敵だった。
今では自分らしく演奏できることを主体に考えている。
黒人ではないことに漸く気付いた。
ちなみにM氏は今では広島に帰っている。
この本を読んでそんなことを思い出した。