山宴会中止

銀座MUGENへ向かう途中でO君からメールが
幹事役のI君の母上が逝去された
従って中止と
一緒に行く予定のKAZUKI君がMUGENに登場
”山宴会中止になったから来てくれたの?”
と私の質問に”なんで中止になったの?”
”メール来たけど見た?”
”あ!本当だ!中止だ”
I君の母上は確かクリスチャンだった
皆そういう年頃なんだ
なんてったって同級生が死んでいくんだから
I君には母上を天国に送ってあげてくださいとメールしておいた
I君は長男だし日本のルールにのっとった手続きがあるから、事務的にも結構面倒
確か死亡診断書を医者からもらい、火葬許可証、埋葬許可を役所から発行してもらわないと何もできない
つまり焼いて埋めないといけないのだ
それは宗教の違いを超越しているんじゃなかったか
人一人が人生の幕を下ろすにはそれなりにたいへんだ
なので連休はのんびりします
I君の母上といえば私は何回も食事を食べさせてもらっている
I君と出会ったのは16才
スリッポンを履いた坊っちゃん然としていた(あっという間にヒッピーのようになったが)
O君に紹介されたんだったか、すぐに打ち解けた
I君の実家は吉祥寺の武蔵野三中のすぐ近くの庭の広い平屋だった
その当時中央線が高架になり駅ビルのロンロンが出来たばかりだった
私も吉祥寺の商店街に親戚が紳士服の店をやっていたので時々は行っていた
まだ駅北すぐの闇市の名残が色濃く残り、もみ殻の上に卵をのせて売っていた
だから吉祥寺は土地勘がある
I君の実家はとても静かなたたずまいのイイ感じの家だった
まるで作家のうちのような風情があった
冬などはガラス越しの廊下に日があたり暖かかった
朝居間へ顔を出すと朝飯をごちそうになったりした
前の晩父上に怒鳴られるほど騒いでいたにも関わらず
私だけが父上に怒鳴られたらしい
大勢いるのに部屋に来て私に向かって怒る
あいつさえおとなしくなれば静かになると確信していたようだった
今にしてみれば迷惑な話だ
人の家に泊って勝手に大騒ぎしているんだから
I君には同居している祖母がいた
”ばあさんは新聞読みながら泣くんだよ、年寄りはいやだねー”
などとI君が苦笑しながらよく言っていた
当然そこには愛情が感じられるのだが
今は私が新聞を読んで目頭を熱く濡らしているんだ
あれから50年近く経ってしまった
実際には昔の日本家屋だから隙間風で冬は寒かったんだろうが、暖かな感じが今もしている
多くの時間は夜にお邪魔したのに
そんなことをふと思い出した